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書店大型化の荒波にあえて飛び込んだ、本屋大好きの起業家/福岡ブックスキューブリック:大井実社長

「書店業界のアルケミストが語る、Since2001年起業の旅」

今回の記事は2017年7月に行われた「ビジ×もん勉強会第38回」の講演内容をご紹介します。

ビジ×もん勉強会第38回は「書店業界のアルケミストが語る、Since2001年起業の旅」と題して、福岡ブックスキューブリック 店主:大井実(以下、「大井社長」と略します。)に登壇いただきました。

会社概要

会社名:有限会社キューブリック
業種:書店
住所:福岡市中央区赤坂2丁目1-12
資本金:1,000万円
HP:http://bookskubrick.jp/

大井社長プロフィール

1961年 福岡市生まれ
1980年 福岡高校卒・ラグビー部(映画・ロック・本に耽溺)
1985年 同志社大学文学部・新聞学専攻卒「ファッション振興財団」(イベント制作)
1990年 イタリア「安田侃」マネージャー
1994年 池田屋・ディレクター
1998年 帰福
2001年 ブックスキューブリック開業

福岡ブックスキューブリックのお店の名前の由来

福岡ブックスキューブリックは、映画監督のスタンリー・キューブリックから拝借されたそうです。

大井社長が2001年から店を始めるにあたって真っ先に、映画「2001年宇宙の旅」を連想され、本を読むことは自己の世界を拡げる旅をしているとことと同じであり、本屋は そんな旅の入口となるような場所だという想いから、「福岡ブックスキューブリック」が生まれました。

大井社長の著書紹介

ローカルブックストアである: 福岡 ブックスキューブリック

古本市をはじめ福岡でブック・カルチャーを盛り上げる書店主が、本屋になるまでの経緯や、本への思いを綴った。

30歳を前に、イタリアで人が集まるエネルギーを持つ「場」の力を実感。高校時代を過ごした福岡に戻り、アルバイト経験を経て書店をオープンさせたのは2001年、39歳の時のこと。30代後半、未経験分野、かつ出版不況の中での本屋開業──冒険心に満ち満ちたその経歴には、驚きを禁じ得ない。

しかし、鬱屈とした青春期を本屋に救われたという著者は、書店とは町に不可欠の文化的インフラだときっぱり。カフェを併設して大人の場所を作り、イベントで人と人をつなげられる。不況を嘆く前に、本の魅力を伝えるメッセージ発信に「どこまで全力で取り組めるか」だと問う。

「本のある暮らし」の意味を再考させられる。

評者:松岡瑛理

(週刊朝日 掲載:Amazonより引用)

 

この著書の中でも起業家向けにオススメとされている本を紹介します。

アルケミスト 夢を旅した少年/パウロ・コエーリョ

大井社長がこの本に出会ったのは、奥さまにプレゼントしたことからでした。
表紙が気に入って、内容を確認せずに奥さまに贈ったところ、「起業する、この境遇をわかって欲しい」という想いで贈ったものと勘違いされ、話を合わせるためにあわてて読んだことがきっかけだったそうです。

起業する人にとっては勇気づけられるエピソード満載で、自分が変わりたいと思っている人には最適の本です。
起業家のバイブル的な本になっており、元スカイマークエアラインズの常務取締役を務められた、経営コンサルタントの大野尚さんもオススメされています。

羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を越えて少年はピラミッドを目指す。「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」「前兆に従うこと」少年は、錬金術師の導きと旅のさまざまな出会いと別れのなかで、人生の知恵を学んで行く。欧米をはじめ世界中でベストセラーとなった夢と勇気の物語。
【Amazonより引用】

就職しないで生きるには/レイモンド・マンゴー

冒頭の言葉は、この本を出版するにあたっての、著者から読者へのメッセージがあり、若くて理想に燃える、ベンチャー起業家らしい言葉がグサリと刺さります。

嘘にまみれて暮らすのはイヤだ。納得できる仕事がしたい-。天然石鹸をつくる、小さな本屋をひらく、シャケ缶をつくるなどの新しいビジネスをまわった報告をまとめた書。
【Amazonより引用】

業界動向は下り坂。書店大型化の中、2001年に15坪の書店を開業

福岡ブックスキューブリック1号店は福岡の警固という街にあるけやき並木のきれいな、その名も「けやき通り」にオープンされました。

1996年をピークに書店業界は右肩下がりで、小さな本屋さんは大型店舗におされて、ドンドン閉店していくような状況の中での起業でした。
このような環境にもかかわらず大井社長には、勝算があったそうです。

本屋大好き、ヘビーユーザーが作る「理想の本屋」

書店業界は、出版点数の増加に伴って、品ぞろえを豊富にするためにドンドン大型化していた時代でした。
その流れに加えて、コミックは大型中古書店に販売を奪われ、雑誌はコンビニに奪われ、人気の単行本は小さな書店には入ってこないなど、街の書店にとってはマイナスの要因ばかりです。

しかし、書店が大型化することは良いところばかりではありません。
忙しい社会人にとっては、広大な売り場のなかを隅から隅まで見て回る時間はありません。
そこで大井社長が考えたのが次の項で紹介する「多忙な社会人のコンシェルジュ」というターゲットの絞り込みとコンセプトの確立でした。

小さな本屋でコンパクトにそろっている。ヘビーユーザーで本屋大好き人間の大井社長が考えた「理想の本屋」です。
「こんな本屋だったらいいよねというお店にしたら、同じように共感してくれる人もいるはずだ」という想いでブックスキューブリックを起業されたのです。

多忙な社会人のコンシェルジュ

大型店と言われる大手の本屋さんの圧倒的な「品ぞろえ」には勝てません。しかし「なんでもありの品ぞろえ」は必ずしもお客さんのためになるとは限りません。
多忙な人からすると、読みたい本が見つからずに、広大な売り場のなかを隅から隅まで見て回ることになります。

そこで大井社長が考えたのは、ターゲットを絞りコンセプトを決めることでした。
ターゲットは「多忙な社会人」、コンセプトは「コンシェルジュ」とすることで、ターゲット層に合わない商品を削ることができ、焦点をあわせた商品紹介ができるようになったのです。

客注システムをうまく活用した

本屋さんの業界は、昔は客注の仕組みが整備されておらず、注文してから届くまでに2週間かかるのが当たり前でした。
大井社長が起業される2001年ごろに、客注システムが整備され、2週間かかっていたところが、注文から3日ほどで届くようになっていました。

そのため在庫を置かなくても、客注システムを利用し、本を販売する仕組みにし、大手と戦える状態を作り上げたのです。

購入物件が運よく手に入った

「けやき通り」は福岡の中でも一等地と言える場所です。中央に近く、利便性もよく、人口密度も高い地域です。
この物件が運よく手に入り、賃貸ではなく、購入物件で起業することができたのです。

もし失敗したとしても、この立地であれば、すぐに借り手はつきますし、購入の際に借りた借金の返済よりも高い金額で貸すことができます。
こうやって起業という背水の陣にありながら、リスクを回避できるように準備をされていたのは大井社長の先見の明といえます。

大井社長の起業マインド

大井社長の起業の出発点は「自分の居場所づくり」でした。
自分の居場所を作るために起業をされたので、自分にとって心地のいい場所、心地のいい仕事であることが第一だったそうです。

最初からミッションにとらわれなくていい

ビジネス書や起業家講座などでは、「最初にミッションを持て」と言われることが多いのですが、大井社長はミッションにとらわれなくていいと言われます。
自分にとって心地のいい仕事をし、お客さんにとって心地のいいサービスを提供し、取引先にとって心地のいいパートナーであること、この3つを大事にされています。

Don’t think! Feel!

燃えよドラゴンでブルースリーが言ったセリフに「Don’t think! Feel!(まず、感じろ!思考はそれからだ!)」というのがあります。
起業したからと、勉強をしすぎて頭でっかちになるより、まずは感じて、頭を使うのはそれからだということです。

一般論を信じるな!

大井社長は起業される際に、多くの人から「本屋はやめとけ」と言われたそうです。
それは一般論で見た本屋業界の姿を知っている人から反対意見でした。本屋業界は下り坂、大型書店化の波が押し寄せる中での起業ですから、一般論に当てはめると十中八九失敗するという意見だったのでしょう。

しかし、大井社長は違いました。
一般論はそれほど正しくない、必ずスキマはあるはずだと、スキマを見つけて行動されたのです。その結果が現在の福岡ブックスキューブリックとなっています。
一般論に流されるより、自分の信じた道を歩くことが起業なんだと思います。

商売は「三方よし」さらに「四方よし」

前述しましたが、福岡ブックスキューブリックでは近江商人の「三方よし」を実践されています。
「三方よし」とは「売り手良し」「買い手良し」「世間良し」の三つの「良し」。売り手と買い手がともに満足し、また社会貢献もできるのがよい商売であるという近江商人の心得を言います。

現在のビジネス社会では、サービスのやりすぎで疲弊したり、過剰なサービスを求めたり、三方のバランスが崩れているビジネスがあります。
これでは良い商売はできなくなります。お客様とは対等であること、へりくだらずに接すること、お店は街を構成する仲間と位置づけることが大事だと言われます。

福岡ブックスキューブリックでは三方よしにプラス1をした「四方よし」を実践されています。
プラス1とは、売り手、買い手、世間に加えスタッフと社長のことを指します。三方に加えてスタッフと社長が満足する商売にすることを目標として日々頑張られています。

お客さんを選ぶ、お客さんから選ばれる

商売は、すべての人を相手にするのではなく、自分の商売に共感してくれる人をどれだけ集められるかです。
ビジネス用語では「ターゲットを絞る」と言われますが、自分の商品や商売に共感してくれる人に対して主張し、それに反応してくれる人を集めればいいのです。

最後に

みんなに本を読んでもらいたい
文学者や詩人になるためではなく
もうだれも奴隷にならないように

ジャンニ・ロダーリ

大井社長は講演会の最後にこの言葉を贈られました。

人の考えたことに流されて奴隷のように生きるのではなく、自律した考えを持つために本を読んで欲しいという意味が込められています。

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